ロンドンにサーチギャラリーがあります。かつてロンドン北部にあったこのギャラリーはロンドンアイ(大きな観覧車)のそばに移転しました。
チャールズサーチのコレクションの中から1990年代に勃興したヤングブリティッシュアーティスト(yBa)の作品が展示されていました。
一体何が彼らの作品を有名にしたのでしょうか?
メインはダミアンハーストです。巨大なサメが一体まるごとホルマリン溶液につかっている作品や、牛を輪切りしてこれまたホルマリンに入れた作品など、彼を有名にした作品が数多く展示されていました。
そのなかに、「A Thousand Years (1990)」という10年以上前に発表されたインスタレーションがありました。これは、大きなガラス製のボックスの中にハエが数百匹放たれているものです。
ボックスの中に餌(牛の頭部)もあるのでハエはかなりいきがよく、しかも大きめで、箱の中を自由に飛び回っていました。すでに息絶えたハエもたくさんいて、そういうハエは床に亡骸を横たえています。
前情報無くはじめてみた作品でした。正直、かなりグロかったです。ただ、ダミアンハーストならではのおぞましいものや光るアイディアを作品として提示することで、議論を巻き起こしていくという手法は、ここでもうまく機能していると感心させられずにはいられませんでした。
1990年代イギリスのアートシーンをまとめた良書「High Art Lite」があります。Jerry Saltzが1995年に計算したところ、このハエは60世代もボックスの中で生死を繰り返したそうです。(Stallabrass, p.24)
「地球上に50億人くらい人は住んでいるけど、みんな死んでいくものなんだ。大低100歳以内でね。」(同, p.24)
実際に、この作品を見て「ガラスボックス=地球」に「ハエ=人間」に見立てられた人がどれ程いるかわかりません。
しかし、評論家にはそう見えます。(私には見えませんでしたが(笑))
結局、現代のアートって、大衆が見てもそのレベルで感想を持つことができ、専門家が見ても納得させられるものなのではないかと思います。
宮沢賢治のように子供(=大衆)が読んでも楽しめ、大人(=批評家)が読んでも味わいがある。そういう2重構造性があったからダミアンハーストや他のyBaはセンセーションを巻き起こせたのでしょう。
ハイアートが難しかったのは、通(専門家)にしかわからない難解なものだったからかもしれません。(私はどうしてもカンヴァスを一面ブルーに塗って、アートだといっている作品を絵画としては理解できません。)
逆に、サブカルチャーがそのままではハイアート足りえないのは、大衆は満足させられても批評家を満足させられないからなんでしょう。多くの芸能人の絵は大衆娯楽にはなりえるけれども、批評家を満足させられないのはここに由来するのでしょう。
アートって面白いですね。